平成19年6月15日(金) 北國新聞
半焼の古民家を再生した記事が掲載されました
 昨年、火災で半焼した加賀市三木町の民家が、焼け残った柱など骨組みを再利用して、新しい住宅に生まれ変わった。かつて大家族が暮らした築60年の旧農家を、暮らしに合わせてコンパクト化し、太い梁や曲木の装束など現代住宅にはない重厚な造りが生かされている。一時は建替えが検討され、「あったらもん(もったいない)」精神でよみがえった住宅は、古民家再生の新しい形として注目されそうだ。

 古民家は久田一枝さん81歳方で、昨年8月、木造2階建て住宅約340uを半焼する火事に遭った。終戦直後に建てられ、玄関から廊下を経て、板の間のオエ、奥に田の字形の座敷がつながる旧農家の間取だった。
 火災では屋根が抜け落ちるなどしたが、太い柱や梁は一部黒く焦げる程度だったことから、新しい住宅の骨格として再利用する事にし、オエの奥の座敷を切り取って、建面積約270uに小型化した。
 居間兼台所として使用される20畳のオエは旧建物と同様に天井が高くとられ、梁などには碍子を使った電気配線の装飾も施され、昔の風情を醸し出している。壁には漆喰が施され、特に鴨居部分にある装束は松の原木がそのまま生かされている。
 
暮らしに合わせ小型化 風情はそのまま
 設計を担当した加賀市大聖寺南町の瀬戸達さんは「外壁に焼杉を使うように、表面が焦げた程度なら柱はより丈夫になる。災害に遭っても、愛着がある家をできる限り再利用し、建物を生き続けさせることは意義がある」と話している。