平成17年7月9日 北國新聞朝刊に掲載されました。
築86年 小松から運び組立て 杜の里に古民家

 小松市津波倉町で建て替えのため解体された築86年の古民家が、金沢市もりの里1丁目に移築され、飲食店として再生された。思い出の詰まった我が家を残したい古民家の持ち主と、落ち着いたたたずまいの店舗を造りたい店主との願いが一致して、風格ある大黒柱や屋根の破風板(はぶいた)などをそのまま使った懐かしい雰囲気の建物が杜の里によみがえった。

 古民家は会社員新谷さん方で、1919(大正8)年に建てられた。老朽化から家を新築することになったが、建物を残したいと考えた新谷さんは古民家再生事業に取り組む建築士瀬戸達さん(57)=石川県加賀市大聖寺南町=に相談し、金沢市内でお好み焼き店「風の街」を営む古川さんが計画していた新店舗に生かすことになった。
 
 移築作業は4月から行われ、柱や板などに番号を付けて一つ一つ丁寧にはずして運び、番号順に組み立てて再現した。二階部分で湾曲しているのが特徴で建築した大工の名前も記されている大黒柱や、長年の風雪に耐えてきた破風板などを用いた建物に、古川さんは「風格が伝わってきた」と11日の開店を控えて感激した様子を見せた。

 8日に店内を見学した新谷さんは「自分の家にいるような気持ちだ」と話し、初めて店舗としての再生を手掛けた瀬戸さんは「古民家の活用の幅が広がった」と話した。
「残したい」飲食店に再生