平成16年12月18日 北国新聞朝刊に掲載されました。
「オエの間」そっくり復元 山間民家、洋風住宅に梁も屋台骨に活用
加賀市の山間地、直下町にあった古い民家が河川改修で解体されたあと、母屋の一室「オエ」の間が、市街地の幸町で新築された洋風住宅にそっくり移築され、よみがえった。17日、山村民家の元の持ち主が完成した同住宅を訪れて、大きな梁や太い柱など、変わらぬ木のぬくもりに触れ、昔を思い出しながら感激した表情を見せた。

 山村民家は加賀市、Oさんの生家で、1962(昭和37)年に建てられ、間取りは昔ながらの「田の字」型の造りだった。昨年夏、直下川の改修工事で手放すことになり、10年前から同市大聖寺で古民家再生事業に取り組んでいる建築士、瀬戸達さん(56)を通じて、加賀市内のKさんの新築住宅での活用が決まった。

 設計は瀬戸さんの長男高志さん(26)が担当し、広さ十畳で、昔、囲炉裏があった「オエ」の間を、洋風住宅の一階にそのまま復元した。母屋の天井に使われていた太さ50センチの大きな梁も屋台骨として活用した。

 再生されたかつての住まいと再会したOさんのお母さんは「梁や柱のマツやスギ、ケヤキは地元の山から切り出した」と、42年前の建築当時を思い出して懐かしそう。息子さんとともに「解体された後、廃棄されなくて本当に良かった」と安堵の表情をのぞかせた。

 これまで10軒の古民家を再生きせた実績がある瀬戸さんは「古い家に使われている木材は十分に乾燥していて、まだ百年や二百年は使える。自然に近く居住性に優れた空間を大事にすべきだ」と話した